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強光紅白  ヒカリメダカの白い光沢は時によって印象的に輝きます。偶然出たヒカリ部分が広く輝く個体を、紅白と呼べる色に作りたい。そんな、交配の繰り返しのお話です。

 琥珀メダカの子の中に、時として、楊貴妃より赤いと思えるような赤い個体が生まれることがあります。今回のお話は、そんな、赤い琥珀メダカの子から始まりました。
 それは、4年前に遡ります。その頃、開店に向け増殖していた琥珀ヒカリメダカの中に、赤くて背中の光沢が強い個体が1匹いるのを見つけました。強光の赤いメダカの美しさに見惚れ、このまま琥珀ヒカリメダカと交配させたのでは琥珀色に戻ってしまうだろうと思い、楊貴妃ヒカリメダカと交配させました。
 しかし、子には、強光と呼べるような「キラリ」とした個体は得られないまま、楊貴妃交配種として少数をストックしたのです。
 その当時、特に紅白系の透明鱗メダカ作りに注目していましたので、透明鱗メダカに夢中で、楊貴妃交配種のことなど忘れていたのですが、あることから、息を吹き返すことになるのです。
 それは、ちょうど同じ頃、新種として導入した出目メダカの面白さに引かれて、多色化しようと交配を始めていたところでのことでした。その時の出目メダカは白系と黄色系の2色だけでしたので、とりあえず、ブルー系とブラック系、赤系を揃えようというわけです。ブルー系とブラック系は、白系の出目メダカと交配し、赤系の交配には、黄色系の出目メダカと楊貴妃メダカを交配させよう・・・と思いつつも、「待てよ・・・、折角だからヒカリメダカを狙ってみよう」ということで、忘れかけていた楊貴妃交配種のヒカリメダカを使ったことからでした。
 黄色系出目メダカと楊貴妃交配ヒカリメダカの
F1は、いたって普通のメダカで、黄色系とピンク系に二分しました。赤を狙うのであれば、F2の親にはピンク系を使う方がいいと判断して、ダルマっぽいピンク系同士でF2を作りました。
 F2は、白〜ピンク〜赤の変化に富んだダルマメダカ・出目メダカになり、F1からは想像できないようなものでした。中に混じって、1割程度と少ないですが、ヒカリメダカが生まれてきました。しかも、ヒカリメダカとして生まれた個体は、全て「キラリ」の強光タイプだったのです。
 一瞬、赤い強光ヒカリメダカのオンパレード・・・と、沸き立ちましたが、結局、赤くなったのは2雄2雌のみで、他は薄いピンクのヒカリメダカに終わりました。しかも、赤い雌は成長につれて光沢部分も赤くなり、光沢が目立たない個体になってしまいました。
 それでも、雄の2個体は美しい紅白系の強光ヒカリメダカになり、「強光紅白」の将来を期待するに十分な存在でした。
 そして、これがメダカ奮闘記の始まりであるとは、思ってもいないことでした。

 偶然得られた4匹の赤い強光ヒカリメダカ、まだ小さかったのですが、その年の春早くから繁殖の準備に取り掛かりました。ただ、雄の片方は、やや曲がっているし、雌の片方は、ダルマ過ぎてうまく泳ぐこともできない。「ウーム。」 繁殖の可能性は、1ペアに絞られていました。
 結局、写真の2匹で、繁殖を進めることにしました。(写真は、その年の秋に撮影したものです。)ダルマ系でしたので、難しいかもとは思いましたが、予想したよりも、繁殖は困難を極めました。
 2ヶ月が経ち、雄が雌を追っている様子は見られるのですが、雌に変化なし。初夏と言える時期になり、やっと産卵を始めたのですが、来る日も来る日も、未受精卵の繰り返しでした。温室内の環境では暑すぎる時期になっていましたので、とりあえず、水槽ごと屋外へ移しました。「ペアを組み替えるべきか・・・。」と思いながらも、「もう少し・・・。」こんなとき、気長の人間には、なかなか踏ん切りがつかないものです。
 屋外に出しますと、少しは交配するようになった様子で、ひと夏かけて、数十卵の受精卵を得ることはできました。「考えてみれば、どれだけの卵をボツにしたことか。」「これで、良い結果にならなければ・・・。」
 得られた数十卵は大切に育てられ、それから3ヶ月、仔は20匹ほど、1〜1.5cm程度になっていました。
 しかし、「キラリ」は半数の10匹、その中で赤い個体は、出目が1匹とダルマっぽいものが2匹、と惨敗に。そして、気がつけば、1年が経っていました。
 「このまま続けても・・・。」と思いながらも、
F1の3匹+αで冬の採卵を試みました。が、また、同じような状態が続いたのでした。

 その年の終わりには、ほぼ諦めの状態でした。
 しかし、交配は色々と行っていましたので、偶然の個体に拘っていた訳ではありません。
 ただ、強光タイプの楊貴妃系メダカの美しさは格別で、ぜひレギュラーにしたい種類でしたので、併行して別の交配を進めていました。
 それは、おそらく最もポピュラーな交配と思われる、白ヒカリメダカの強光タイプと楊貴妃ヒカリメダカの交配でした。予想では、F1で黄色系かピンク系のヒカリメダカの強光タイプが生まれ、F2に白〜楊貴妃色の強光ヒカリメダカが・・・。普通のヒカリメダカの繁殖は楽ですし、黄色やピンクなど、色々な色のヒカリメダカが纏めて作れますし、考えてみれば簡単ではないですか。
 ちょうど残っていた強光の白ヒカリメダカの雌と、楊貴妃ヒカリメダカの元気な雄を数匹選んで、早速交配しておりました。
 春の採卵で100ほど生まれたF1は、予想通りの黄色系とピンク系になりました。中には、かなり赤い個体もいましたので、それを含めて、なるべく強光の個体を選び、F2を作りました。F2は、さらに多くの数を採りましたが、思ったより赤い個体が少なかったことは、誤算でした。
 結局、F2から選別できた赤い個体は10匹あまり。
 しかも、下の写真の個体が唯一の強光タイプ?で、他は、ほとんど普通の楊貴妃ヒカリメダカだったのです。

 もっと簡単に出現するであろうと思っていた赤い強光ヒカリメダカでしたのに、二年越しの取り組みの結果にガックリしました。色物だけに色上げしないと選別できないわけで、色の確認のために時間が掛かるのは仕方ないことなのです。しかし、色が上がっても、こんなにも強光は遺伝しないものなのかと・・・。
 けれども、ヒカリメダカは人気があるのでしょう、選別外の
F2をミックスヒカリメダカとして販売し、多くの方に買って頂けました。色がどうなるのか、ヒカリがどうなるのかはともかくとして、F3の繁殖は続けています。
 少し大きくなったF3を見てみましたが、やはり、強光にはなりそうに無いでしょうね。ということで、このまま楊貴妃ヒカリメダカの交配種として、扱っていくことにしました。 そして、昨年の秋だったでしょうか、選別した10匹あまりのF2を眺めて考えていました。
 「あまり、美しくないなあ。」
 強光の遺伝はともかく、光沢部分が輝いていないのです。黒っぽいというか、グレーというか、光が当たっても鈍い感じなのです。急いで、残っている他の個体も見てみたのですが、光沢部分は体色を薄くしたような色の個体と体の地の色と思われるグレーっぽい個体で構成されています。
 元親である白ヒカリメダカは、白く輝く美しいものでしたので、思っても見ないことでした。
 強光であったとしても、求めているものとは違うということになりそうです。
 この交配自体は、目指す成果が出なかった取り組みでしたが、併行して進めていて良かったと、今では思っています。 そう、この結果があったから、元へ戻ってやり直すことで、この後訪れる機会に出会えたと思えるのです。


 もし、白ヒカリメダカとの交配に、強光の赤いメダカが数匹でも生まれていれば、色の加減はともかくとして、そのまま強光メダカとして増殖に励んだことでしょう。しかし、結果は違っていました。となれば、振り出しに戻って再検討するしかありません。
 昨年の秋の時点で、手元に残っている紅白っぽいヒカリメダカは、出目交配から生まれたF2の1ペアとF3の3匹のみでした。F3の3匹は、全て雄でしたので、色が薄い強光の雌+薄赤の普通な雌を交えて、春から繁殖を進めていたのですが、ひと夏が過ぎてもほとんど受精卵が得られず、雄の動きを見ても見込みが無さそうな状況でした。
 使えそうな個体は、F2の雄1匹しか無さそうです。ずいぶん大きくなっていましたが、いたって元気に雌を追いかけていましたので、最後のチャンスと思い、この個体で冬の交配を考えました。
 この雄の遺伝を生かすとした場合に、次の3通りの交配に絞られました。
1.色の薄い兄弟メダカのヒカリ雌と交配する。
2.赤い普通種の兄弟メダカの雌と交配する。
3.元親である楊貴妃ヒカリ交配の雌と交配する。
1.は、強光ヒカリが確実に生まれるのでしょうが、色が分かりませんし、交配が困難なことに代わりが無いでしょう。2.は、色は良い個体が生まれそうですが、ヒカリが生まれないかもしれません。3.は、強光にならないかもしれませんが、赤いヒカリメダカは確実に生まれるでしょう。
 結局、赤いヒカリメダカを維持したいと思い、3.の交配を選びました。
 また交配がうまくいかないのではないかと気になりましたが、メダカが大きくなっていたこともあるのでしょう、短期間ではありましたが、思うより順調に採卵が出来ました。そして、今年の春には、2水槽に100余りの仔が泳いでいる状態になっていました。
 まだ、色は薄い状態でしたが、全てが赤系統のヒカリメダカで、強光は・・・。いました、いました、少しですが「キラリ」の個体が確認できました。
 結局、この交配で得られた強光ヒカリ個体は、18匹(約2割)でした。 写真は、秋口にベストな個体を撮影したものです。
 春に選別したときには、18匹全てがこのようになると思い込んでいたのですが・・・。


 秋口に撮影した際、横から写真も撮っていました。上からでは白っぽいように見えるのですが、横から見ますと結構赤いメダカでした。楊貴妃系の特長とも言える腹部の赤はしっかり出ています。上から見て体が白く見えるのは、光沢部分が背びれの下にまで回っているからでしょう。
 話は、戻ります。 春に「キラリ」を選別した18匹は、色もまだ余り出ていませんでしたが、そのまま繁殖させることにしました。といいますのも、ちょうど繁殖のピークの季節であり、販売のピークの季節でもありましたので、多種類の繁殖を進めなければなりませんし、店の方も多忙な状態ですので、販売普及品種以外の種類に構っていられないのですが、本種も早く繁殖させたいという思いがあったからです。 夏から秋にかけて、それなりの数を確保して来年に備えようというわけです。
 そして、秋になって繁殖も一息つき、確認と写真撮影を行ったのです。
 まず、親の水槽を見て、「アレッ」。親メダカの光沢が目立つ個体は、チラホラという感じだったのです。多くは、背中にはっきりと一筋の赤があり、光沢は赤味がかって目立たないメダカに変化していました。
 次に、今夏に採卵した仔も見てみましたが、「やはり」。光沢が目立つ個体は、こちらもチラホラという感じでした。親からすれば当然の結果でしょう。
 親を再選別しましたら、紅白系と呼べそうな個体は、4雄3雌のみだったのです。「繁殖前に、再選別していれば」と思いましたが、仕方がありません。
 再選別した親に絞り込んで冬の採卵準備を進めていたのでした。


 冬の繁殖に入る前に、出目交配から出たオリジナルのF3と比較してみました。
 上の写真は、一年前に撮影した、そのF3で、下の写真が、秋に撮影した楊貴妃ヒカリメダカの掛け戻しのF1です。上は、両方が雄で、頭は余り赤くなかったのですが、尾びれの赤が印象的です。下は、雄雌のペアーが写っています。
 繁殖数が少ないためかも知れませんが、オリジナルの子には、同様な色の雌が生まれなかったのですが、掛け戻しの子は雌でも同様な個体が得られました。楊貴妃ヒカリ交配メダカを掛け戻した影響でしょうか、全体に赤味が強くなった印象で、ブルーシルバーの光沢を示すものから、オレンジがかった薄いピンクの光沢のものまで、微妙ではありますが個体差があり、数を増やしても変化のある水槽が楽しめそうです。
 また、ペアーが得られたことは重要なことで、冬の繁殖結果が楽しみになってきました。
 しかし、採卵を始めたばかりではありますが、強光タイプの本種には不妊性があるのかもしれないと思える様な、不安な部分も見えてきました。膨らんだ腹を揺らしていながら全く産卵しない雌と、数卵産むも未受精ばかりの雌を見る毎日です。
 まだまだ、強光紅白メダカ作りの奮闘は続いていくのだろうと思います。

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