キンメのお話 | キンメは、黄色系のアルビノメダカのことを、目の周りの色からこのように呼んでいました。初めて、偶然にやってきたアルビノメダカの飼育、大変に苦労しましたが、この経験があってこそ、今も、メダカの飼育を続けていられるのだと思うのです。 |
メダカ飼育を改めて遣り始めた頃の事である。やはり、綺麗な種類が良いとばかり探した結果、楊貴妃というのがいいと思い、5匹程、購入して飼い始めた。 綺麗に見える様にと、蛍光灯を付け、元気に泳ぐ様にと、小型のヒーターも入れて、中々いいなあと悦に入っていた。 しばらくすると、楊貴妃さんも年頃を迎え、メスは卵をぶら下げて泳ぐようになった。これは大変と、早速、小さな網かごを買って、水槽の中に取り付け、卵のついた水草を入れて子育てを始めた。後は孵化を待つだけである。 数日後、黒い目玉が見える様になってきた卵に混じって、一寸、変な卵があるのに気が付いた。 「何だこれ・・・・・?」その卵は、蛍光灯の光に照らされて、透き通るようなオレンジ色をしていた。まるで、オレンジゼリーかオレンジ色のガラスビーズをぶら下げたかの様である。 「何て、美しいんだ。」 それからというもの、そのたった1粒の卵を30分以上眺める日が続いた。よく見ると、金色の小さな塊が時々向きを変えている。黄色っぽくなったり、濃いオレンジ色になったり、確かに動いている! そして、さらに数日後、かごの中を覗くと、 「ない・・・」 辺りを見回して、1分と掛からなかったであろう、細くて薄いオレンジ色の物が泳いでいるのを見つけた。他の子よりも、細く小さく頼りなげで、目だけは大きく金色一色であった。非常に活発に泳いで落ち着かないという感じであった。 金色の目が印象的だったので、私は、キンメと呼ぶことにした。 一つ、また、楽しみができた。30分以上、その小さなかごの中を覗く日々は続いた。隠れていて見つけにくい日もあったが、大抵は、探せば見つける事ができた。 しかし、少し大きくはなったものの、エサを食べている様子が無い。 「どうしたんだ。」 お腹がどんどん小さくなって行く。頼む、エサを食べてくれ・・・・・願いは届く事無く、1週間後には、その姿を消してしまった。 ポカンと穴が開いたような空しさが残る結果になってしまった。 「あれは、何だったのだろう。」 キンメに夢中になっている間に、他の子たちは、すくすくと育っていたかと言うと、そうでも無かった。かなりの数の卵を入れて、一時は、小さいのがたくさん泳いでいたが、1週間、2週間と経つうちに結局5〜6匹になってしまっている。 「親と同じ水槽で飼うのは無理なのかなあ。」 そこで、プラスチックの箱を水槽にして、ガラス水槽を置いている棚の中段に、半分飛び出す形で置き、その中で、卵を育てることにした。箱は、半分が棚の中にあるため奥の方は暗くて見えないが、魚は明るい方へ寄ってくるから大丈夫だろう。 この方法だと、孵った子は、順調に育っているようであった。何度かその箱に卵を追加し、小さな子メダカが泳ぎ回るようになった頃、 「あっ!」 1匹、金色の目を光らせて泳いでいる、小さな小さな子メダカを見つけたのである。 |
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「あっ!」 たった一匹だけど、小さな小さなキンメが、他の子メダカに混じって泳いでいた。 今度こそは、育て上げなければならない。前と違って、十分に広い水槽の中である。環境は良いであろう。次は、エサだ。ただでさえ細かい稚魚用のエサを、さらに砕いて(ほとんど、変わらない様にも見えたが?)与える様にした。 4〜5日して、動き回りだすと、とにかく良く動く。 これで、大丈夫だろうと、その時は思ったのだが・・・。エサに興味を示しているのは良く解った。食べている様である。しかし、数日経っても、一向にお腹が膨らんで来ない。それどころか、痩せる一方の様に見える。 良く見て見ると、エサに興味を示してつついているのだが、興味を示すのは大粒のエサだけで、口に入らない。結局、食べることが出来ないということか? 数日後、そのキンメも姿を消していた。 しかし、数日経つと、また一匹、小さな小さなキンメが生まれてくる。・・・・・エサ?温度?光?水質?、色々と試して見る。 今度は、エサも食べているし、背中の色も、少し赤くなった。・・・・・しかし、何日かして、やはり姿を消してしまう。その時は、必死であった。メダカを育てるのが、こんなに難しいとは、思っても見なかった。 −他の子は普通に育っているのに。− そして、そんなこんなを、何回、繰り返しただろうか。 −もうだめだ。− 半ば、諦め状態で、何の策も無く、次の誕生を待つしかない状態になってしまった。それから、3週間ほどの間、新しいキンメは生まれてこなかった。 −あれは、夢だったのだ。− と、自分に言い聞かし、もう、忘れることにした。 子メダカを育てている水槽は、棚から半分出るような形で置いていたため、奥の方は良く見えない。覗き込んでみると、おそらく食べ残しのエサだろう、ひどく汚れている。吸い出してやろうと、細いホースを奥へ突っ込んで、水を抜こうとした時、1.5Cm位の明るいオレンジ色の塊が、目の前を横切った。 キンメだ!生きていたんだ! どう例えれば良いのだろう。「財宝でも探し当てた。」そんな気分であった。 どうも、この一匹の’キンメ’は、ずっと、棚の奥の暗いところで、残りエサを食べて生きていたみたいだ。それからも、いつも、奥のほうで、右から左へ行き来する様子が続いた。 こうして、偶然のように育ったけれど、たった一匹だけである。 もっと増やさないと・・・・・新たな意欲が湧いて来た。 |
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たった一匹のキンメさん、丈夫な個体だったのだろう。非常にゆっくりではあったが、順調に育ち、そろそろ、親の水槽へ戻してやることにした。 泳いでいる様子を見るに付け、そのオレンジピンクの姿態に、なまめかしいとでも言うのか、独特の雰囲気を持っているのを感じた。 そうだ! これは人の肌の色、しかも、火照った肌の色だ。人が、肌の色に反応し、なまめかしさを感じるのは、自然の事なのだろう。 そして、それからも、キンメとの奮闘は続いた。アルビノや点目は、目が悪いことは知っていた。知っていたが、だから、飼育が難しいと言うことしか解らない。どうすれば良いのかは解らなかった。 解らない時は、観察するに限る。観ていると、何か特長なり、ひらめきなりが見えてくると言う物だ。 もう一度、一から、良く観察をして見ることにした。 1.エーと、キンメは良くぶつかる。平気で他のめだかにぶつかっていく。 2.良く、他のめだかに襲われる。エビか何かと間違えられてか、他のめだかが突きに来ても、逃げ遅れる事が多い。 3.隅っこが好き。他のめだかがあまりしない、容器の縁に引っ付いて泳ぐ事が多い。 全て、目が悪いために、視覚ではなく、感覚で行動しているためなのだろう。 エサがうまく食べられないのも、小さいエサが、感覚では判断しにくいからなのだろう。 知っている人には、当たり前の事だったのかもしれないが、こういった習性が解ると、どうすれば良いかが、何となく見えてくる。様は、感覚で解るように雑音を無くしてやれば良いのだ。 幾つか、自己流のコツを考えて、それを守れば、100%ではないにせよ、育つことが解った。 育つ様になれば、先日までの事が、嘘の様である。 たった1匹のキンメさんが残ってくれたおかげで、「どんな事にも答えがある。諦めてはいけない。」と言うことを、この歳になって、改めて、思い知った。 おそらく、このキンメが居なければ、嫌になって、めだか飼育までも止めていたかもしれない。 ちっぽけなめだかの事かもしれないが、貴重な経験をしたと思う。 ところで、全てがキンメになる訳ではなく、目の周りが白いものと、黄色いものがいる。特に、黄赤みが強かったので、’キンメ’という命名が、’ぴたり’だったかな? 今、1匹目のキンメさんは、ある♂めだかさんに嫁いでいる。新たなる、奮闘を自分で作ってしまったが、これまた、楽し。 面白い結果が出れば、また、紹介したいと思っている。 |
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とにかく、暑い夏、自分もそうだが、狭い我が家の住人(めだか)も大変なことであった。水換えの連続でしのごうとしたが、水の準備が間に合わない。おろおろしている間に、多くの貴重な住人が旅立ってしまった。環境のせいだから仕方が無いと思おうとしても、亡くした寂しさとどうしようも無かった悔しさでいっぱいである。 写真は、5月下旬のキンメさんとスモールアイさんの様子である。薄暗い明け方にこっそりと撮ったため、写りが悪くて申し訳ない。 結局、1匹目のキンメさんは、この後、夏を越すことが出来なかった。 でも、何も残さなかった訳ではない。6月に入って、2週間ほどの間に、100卵程度産んで、パッタリと産卵しなくなり、後は、余生を送るばかりとは、何と短い人生なのかと思う。 やはり、昼間の暑さのせいか。それに、産んだ卵も受精率が低かったのか、稚魚は30匹位しか生まれなかった。しかも、ほとんどヒメダカと変わりなく、アルビノもスモールアイも出なかった。 遺伝の法則で言えば、極当たり前の事で、F1で変わったものが出るわけもなく(ただ、綺麗な色のめだかであったのが救い)、F2に期待しようと大切に育てたつもりであった。 が・・・、この子めだかが、実に弱い。 夏の暑さも手伝って、あれよあれよという間に減っていき、残ったのは、たったの6匹の状態。 でも、先日から産卵を始めたので、これからは、涼しくなることだし、もう一度、がんばって育てようと思う。 何とか、引き繋げた命。 どうなるか、楽しみである。 |
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そう、あれからのキンメさんの子孫のお話。 6匹残ったキンメさんのF1は、晩夏から産卵を始めたが、まだ小さかったため、1日に2〜3卵、何日も掛かって、やっと、秋までに30卵ほどを集めた。 当然、成長の差が出たが、秋本番の頃には、かなり大きいものから小さいものまで、15匹のF2が育っていた。 小さい頃から、1匹のスモールアイと1匹のキンメがいるのは解っていた。 ところが、先日、スモールアイは1匹で無い事に気が付いた。15匹の内、6匹がスモールアイになっていた(残念ながら、キンメはスモールアイでは無かったけれど)。 結構な確立である。 どうも、成長と共にスモールアイになっていくようである。 これは、面白い・・・とばかり、続けてF2を増殖しようと思う。 写真を撮ったのだけど、暗くて、良く解らない写真になってしまった。 |