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複色めだか 錦鯉や金魚のように、紅白や三色のような複色めだかを作りたい。国産観賞魚を愛する者であれば、誰しも思うことでしょう。私も、実現に向けて奮闘しているのです。そんな複色めだかのお話です。

始まりは、楊貴妃×透明鱗。

 3年程前になります。
 色々と新しい交配が登場してくる中で、楊貴妃×透明鱗という交配種に心惹かれ、早速注文しました。
おそらく、背面は美しい赤で、薄い白の体、ワンポイントのえらのピンク。
想像を膨らませて、到着を待ったものでした。
 しかし、届いたメダカは、想像に反するメダカで、大いにがっかりしたのを覚えています。
 どう見ても、普通の透明鱗メダカにしか見えませんでした。
いえ、普通の朱色の透明鱗メダカでも、もっと赤いと思ったものです。
 それでも、殖やせば出てくるであろうと思い、2代・3代と、数は少しずつでしたが育てて行くことにしました。
丈夫なメダカで、飼育・繁殖には苦労する事も無く、順調に育てることができましたが、同じ様なメダカばかりが増えていったのです。

 結局、3代目にも、赤いと言えるような個体は得られる事無く、1年以上の月日が流れてしまい、他の美しいメダカが登場してくる中で、ほとんど、その存在すら忘れてしまう状況でした。
 ところが、昨年の年初になって、楊貴妃×透明鱗に打ち込むことになる出来事が、突然にやってきたのでした。

気付かなかった、赤いメダカ。

 昨年の年初、温室で越冬しているメダカたちを観察していた時のことでした。
 久々に覗いた楊貴妃×透明鱗メダカの水槽に赤い塊を見つけました。
と、言いますのも、楊貴妃×透明鱗メダカの水槽は、棚の奥に追いやられ、その水は珪藻で緑濃く、魚が居るのか居ないのか解らない状態であったのです。
 前年の秋遅くまでは、他の交配に使っていたりしましたので、屋外ではなく、温室の中に置いていたのですが、卵を取る気など無いため、そうなってしまったのです。
 赤い塊は、私が覗いた瞬間に姿を消したのですが、
「多分、めだかだ。」
と思いますと、ほぼ同時にネットで緑の水を掬っていた様に思います。

 探して、探して、出てきたメダカは、また、予想に反するものでした。
 「こりゃ、大変や。」(慌てると、大阪弁になってしまいます。)
 写真は、春になって撮影したものですが、頭だけが赤いメダカを見つけた時には、一瞬、わが眼を疑いました。
 じわじわと、うれしさが込み上げて来たのを覚えています。
でも、1匹ではどうしようもありません。
慌てて、2匹目を探しましたが、何処を探せど、二匹目のドジョウは見つかりませんでした。

 仕方がありません、雄の様でしたので、
 「どの雌と交配するべきか・・・」
 色々と迷いましたが、同じ水槽にいた色の薄い兄弟メダカ と 楊貴妃メダカ を、1雌ずつお見合いさせ、3匹で交配させることにしました。
 産卵条件を整えて、普通であれば順調に産卵する筈なのですが、中々産卵しない、産卵しても少しで、全て未受精卵なのです。
結局、春が過ぎ、夏が来て、環境を変えたり雌を替えたりしたにも関わらず、1卵も得る事が出来ませんでした。

 そのメダカは、子孫を残さないまま、秋には天に召されたのでした。
 「採卵をしたいが為、無理な飼育をして、寿命を縮めてしまったかもしれない。」
今でも、そう思うのです。
 しかし、この1匹のおかげで、もう一度、楊貴妃×透明鱗を見直すことになったのは確かです。

 そして、その時には、同じ遺伝子を持っているのではないかと思われる個体が生れていたとは、思っても見ないことでした。
他の交配にも・・・。

 頭が赤いめだかのことがあって、仕方ないと諦めるしか無いのでしょうが、他にもいないかと「ジタバタ」したり、やはり諦めきれないものです。
 同じ楊貴妃×透明鱗は、他の交配にも使っていましたので、何処かに現れても不思議ではありません。
 特に、めだか奮闘記(朱黒の夢)で紹介していますピュアブラック透明鱗も、このメダカの兄弟メダカを使っておりますし、色の良い楊貴妃メダカを掛け戻して楊貴妃透明鱗を作り直すこともしていましたので、同じ傾向のメダカは必ず出てくるであろうと思っていました。

 その秋、朱黒の夢を追いかけて、ブラック系と楊貴妃や赤メダカ、透明鱗メダカなどを掛けることに熱中していましたので、黒い透明鱗メダカは多数泳いでいました。
 その中に、2匹、他と違って、頭が特に赤く目立つ個体を見つけたのです。
その個体は、ピュアブラック透明鱗の兄弟メダカと楊貴妃を交配した中にいたのです。
 同じ水槽の他の個体に比べて成長が遅く、かなり小さかったので、そのまま、しばらく見守る事にしました。

 冬になり、春準備の交配を始めた時に、この2匹を確認したのですが、2匹共雌であることが解り、またまた「どうしたものか」になりました。
 「今回は、失敗できない。」
 冬の繁殖では、同じ水槽から、なるべく赤みのある雄を2匹捜して、交配を進めました。
それが、最も確実であると考えたからです。

 写真は、翌春(今年の春)に撮影したものですが、体の黒さに頭部の赤が引き立ちましたので、この2匹を、紅頭ブラック透明鱗と呼ぶことにしました。
 今年は、このメダカの2世・3世を楽しみに増殖を続けてきましたが、これが、予想外なことになってきています。
楊貴妃だけではありません。

 楊貴妃×透明鱗に熱中して追い続けていたとは言え、複色という観点では、他の種類でも進めていました。
要素としては、透明鱗メダカもそうですが、ヒカリメダカに2色のイメージを持つものがいます。
 それもそのはず、ヒカリメダカの背面のヒカリ部分が腹部の転移とされていますので、広く転移した個体は、体のほとんどが白に見えても不思議ではないでしょう。
 いつも、ヒカリ部分が広い個体 (強いのではなく、背中全体に広がっているもの) を探していました。
 そして、ヒカリの広い個体を見つけて、透明鱗と交配する事を進めて来ました。
 ある程度の数を作って、その中を捜しますと、頭部が赤く腹部から後ろはヒレを含めて白い個体が見つかるのですが、交配しますと、また元に戻ってしまう。
そんな繰り返しでした。
 個体の特長を引き継ぐのが、こんなにも難しいとは思っても見ませんでした。
 やっと、色の境界が区別できるメダカになってきましたが、それでも写真程度のものでしかありません。
 一見、普通のメダカと変わらない様にも見えますが、上から見ますと、黄色と白に見えるため、黄白と呼んでいます。
このメダカは、これからも続けて追求していかなければならないと思っているのです。
話を元に戻しましょう。

 これが、2匹だけ選別できた、紅頭ブラック透明鱗メダカです。
「何か、ヘンなメダカ?」
 どうしても、黒い部分がまばらになりますので、ブチメダカの様に見えてしまいます。
ただ、ブチメダカと違う所は、暗い所では、体の白い部分が真っ黒になる事です。
(但し、1年以上生育して大きくなった個体だけですけれど。)
 この赤と黒のコントラストを残すため、同じ交配の兄弟メダカと交配して、F2を作りました。

 春に、F2の養魚水槽を撮影したところですが・・・。
 とても、1種類のメダカの水槽とは思えない状況でした。
黒、茶、黄、朱、白 と、それらの透明鱗と思われるものが混じっていました。
 「余り、狙っているものがいないなあ。」 と、思いましたが、
まだ、これから色が変化する個体もいますので、ひと夏、育ててから選別することにしました。
 それからは、交配、固定化の難しさを感じながら、飼育する日々でした。
念ずれば、通ずる?

でも無いのでしょうが、しばらくの間、餌をやりながら赤い頭を探すのが日課のようになっていました。
 考えて見れば、いつも、偶然に見つけることで、固有の特長を見出して来たとは言え、
その特長を残す事は、「駄目もと。」であった様に思います。
 そう考える方が、楽ですからね。
 しかし、今回は、何が何でも、引き継がせないとという気持ちになっていました。
そうなると、どの個体も赤みがあるように見えてくるから不思議です。
 個体を比較することで、より赤いものを探していきますと、幾つか特長のあるものが見つけられるようになってきました。
 上の写真では、どうでしょうか。
朱色のメダカの真下に重なっている個体がそうですね。

 結局、100匹程の中から、15程度のそれらしき個体を抽出できました。
 今度は、雄雌が得られましたので、F3以降で固定化に向けて取り組めそうです。
 抽出したメダカが、真に紅頭ブラックになるのは、来春頃でしょうか。
本当の狙いは?

 写真は、一昨年に紅頭のメダカを生み出した楊貴妃×透明鱗の血を引いているはずのメダカです。
 楊貴妃×透明鱗に、楊貴妃を再交配した中から、赤い透明鱗を選抜して、n代目になります。
 透明鱗の出現率はともかくとして、一様に、赤い個体が生まれる様にはなりました。
 ヒカリ透明鱗メダカはどれも赤い線状の模様が背中に入り、非常に美しいと思います。
 それでも、毎回、特長のある個体がいないかを探していました。
「これは、どうだろう?」
と選別してみても、どうしても贔屓目に見てしまっているのでしょうね、成長とともに体全体に赤が乗ってきます。

 結局、この系統からは、体の白い個体は見つかりませんでした。
 「難しいものだなあ。」と、感じずにはいられません。
 真に狙っているのは、二年前に見たあのメダカ。
紅頭ブラックに出現した特長を、楊貴妃透明鱗に求める交配を、続けているのです。

 そして、この、めだか奮闘記(複色メダカ)も、これからも続けて書いて行くことになるでしょう。

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